飲食DXの成功事例公開。DX成功店が語るリアルな導入結果と感想
先日、「都内商業施設に出店した地方ブランドはどうなったのか・サブスク型飲食ブランドの成功事例を無料公開」セミナーを開催いたしました。
主催は株式会社favy、ゲストには飲食DXに成功している飲食店として日本茶ブランド「CRAFT TEA」を運営する株式会社クラフト・ティー代表取締役の新谷健司氏をお招きしました。
今回は当日の内容のダイジェストをご紹介。
飲食DXに特化した顧客管理のSaaSを提供する側、さらにそのツールを使って飲食DXに成功している飲食店側双方の視点から「店舗運営に必要な飲食DXとはなにか?」「実際にツールをどのように活用して飲食DXを行っているのか?」などをお話しいただきました。
<目次>
登壇者ご紹介
株式会社クラフト・ティー 代表取締役
新谷健司氏
SEとして社会に出た後、デロイトトーマツグループに転職。同社での10年間の勤務中は中小企業向けのコンサルティングを数多く実施。グループ内では5つの新規事業立ち上げに参画。2015年11月に、中小企業の経営支援を行う株式会社経営参謀を設立。代表取締役に就任。支援企業は全国400社超。
2020年1月に川根本町の活性化を目的として株式会社KAWANEホールディングスを設立し、Chabacco事業、CraftTea.tokyo事業を立ち上げる。
同年12月、KAWANEホールディングスからCraftTea.tokyo事業をスピンアウトし、株式会社クラフト・ティーを設立。代表取締役に就任。
ブランド設立から約半年でお茶のサブスクスタンド『CRAFT TEA』を丸の内や飯田橋・新宿マルイ内など都内を中心に新店5店舗オープン、さらにFC店2店舗を含む計7店舗を運営しています。
株式会社favy 代表取締役
高梨 巧
2001年にWeb制作会社を起業。
その傍ら2002年に株式会社アイレップに入社しSEM/SEO事業の立ち上げに従事。Google Adwordsの日本上陸に伴い、代理店であったアイレップの担当者としてSEMコンサルティングを担当。同時に顧客の事業開発を支援する中で、これまでに1,000社以上の事業開発やWebマーケティング業務を支援。
2015年に株式会社favyを創業し、代表取締役社長に就任。飲食店をはじめとする店舗向けのDX支援を行う。
変化しなければいけない飲食業界
高梨:
飲食業界にとって緊急事態宣言の影響は大きく、ピークで落ち込んでいた時よりも戻ってきてはいるものの未だに完全に復活していないと言えるでしょう。
実際に利用者のWEB検索数を分析してみると、「大手グルメサイトでお店を検索して探す」という人は、コロナ前から見て30%程度まで落ち込んでいる状況です。
さらに最近CMなどの露出が増えてきているように感じる「デリバリー」も業界としては伸びてきていますが、利用者の需要がそこまで大きく増えたわけではありません。
そして中食(外食と家庭での料理の中間にあり、惣菜や弁当などを買って帰り家で食べること、あるいはその食品のこと)のテイクアウトが激的に伸びているわけでもないのです。
これはつまり「外食の機会が減ったからと言って、その代わりに特定の分野のニーズがどんどん増えてきている状況ではない」ということになります。
残念ながらテイクアウトやデリバリーが飲食業界を救うほど好調なわけではないということが数字に表れてきています。
これからの飲食店運営には欠かせない飲食DXとは
高梨:
そんな中、飲食店が残っていくためには変化が必要です。
実は「大手グルメサイトで検索してお店を探す」という行為は、コロナ前からも徐々に減ってきていました。新型コロナウイルスは、このトレンドを加速させたということに過ぎません。
理由としては、Instagram・Twitter・FacebookなどのSNSでお店を探すというユーザーが増えたことが考えられます。
飲食店は、「WEB検索」だけではない様々な方法で認知を増やすということが必要になってきているのです。
認知を広げる方法を様々な飲食店が模索する中、注目されてきたのが「飲食DX」という言葉なのではないでしょうか。
DXというのは「デジタル技術を活用する」ということが前提となり、かつ「新しい価値を創出する」ということです。
単なるITツールの導入ではない、ということが重要です。
「デリバリーを導入する」「モバイルオーダーを導入する」ではなく、その導入によって見えてきた実際の数字データを分析し、業態を変更することや、メニューや顧客体験を変えていくことがDXと言えます。
今回は、「飲食DX」に成功している店舗としてお茶のサブスクスタンド『CRAFT TEA』を運営する新谷さんに店舗の強みや一気に出店できた秘訣などをお伺いできればと思います。
飲食DXの秘訣は「会員管理アプリ」?
新谷:
『CRAFT TEA』が飲食DX成功店と呼ばれているわけはその業態にあります。
実は『CRAFT TEA』のビジネスモデルは、favyさんが運営しているサブスク型コーヒースタンド『coffee mafia』を参考にしているんです。
こちらをもとに、『CRAFT TEA』のビジネスモデルを作成しました。
全国のお茶の生産者さまから仕入れた茶葉を「ビジネスがしやすいお茶」「扱いやすい茶葉」としてティーバッグにして直営・FCの店舗に卸しています。
実はティーバッグにするにはもったいないほどの高級茶葉なのですが、お客さまに簡単に日本茶を楽しんでいただくため、生産者の方々にお願いをして作らせていただいています。
いずれはECサイトでの販売も予定していますが、まずは簡単にお茶が飲める方法を幅広く認知してもらうため、サブスク店舗での販売をスタートしました。
そして現在はこのビジネスモデルがどんな立地でどんな業態であれば成り立つのかを検証している段階です。
その検証のために非常に重要になるのが「会員管理アプリ」です。
サブスクの会員さまが「いつ来店したのか」「いつ解約したのか」は、紙の会員カードだと検証できないことが多いですよね。それがアプリだときちんと把握できるようになるんです。
会員さまは『CRAFT TEA』に来店された際、ご自身のスマホに表示された「会員券(バーコード)」を店員に提示します。そして店員は提示されたバーコードをレジに読み込みます。するとレジに「いつ来店したのか」「サブスク商品以外に購入したものは何か」などのデータが記録される仕組みとなっています。
入会・解約もスマホで完結しますし、漏れることがなく顧客データを正確に取得することが可能なのです。
これらのデータを分析して改善していくことが、サブスク型飲食店の成功に直結していると考えています。
そしてそれこそが「飲食DXに成功している」と仰っていただけている秘訣なのかもしれません。
会員データを取得・分析し、店舗運営に活用=飲食DX
新谷:
「会員管理アプリ」を導入することによって、様々なデータを取得して分析することが可能です。いわゆる「ID-POS化(「いつ、どこで、誰が、何を、いくつ、いくらで」買ったかを把握できる)」ですね。
そしてそのデータは店舗運営において様々な方法で活用することができるのです。
ここからは実際に『CRAFT TEA』で分析しているデータとその活用方法をご紹介します。
①「平均来店回数」から「仕入れ値」「会員券の価格」を調整
会員管理アプリを入れたことにより、会員さまの平均来店回数を把握できるようになります。すると1人あたりが1ヶ月に消費する茶葉の量がわかり、それによって毎月使える仕入れ値を計算することが可能になりました。
さらに、会員券の価格も調整しています。
「これくらい来店してくれるかな」という予想ではなく、しっかりとした実績をもとに値を出すことができるのがデータ分析の強みだと思います。
②「会員数の推移」から「新店舗の立地」を検討
『CRAFT TEA』はこれまで、静岡の川根本町、東京の丸の内・飯田橋・新宿マルイ内・銀座と、様々な場所でオープンしました。そしてそのオープン時における会員数の増加をデータで取得しています。
「どこに新店舗をオープンしたときにどれくらい会員が増えたのか」を把握できるので、次の店舗をオープンする際のヒントにしています。
「商業立地」「住宅立地」「観光立地」それぞれで利用時間や利用回数が異なるので、分析していて面白いです。
③「会員獲得数」「継続率」から「店舗の改善ポイント」を捻出
今『CRAFT TEA』では月額500円(通常2,000円)で「ライトプラン」をご購入いただけるキャンペーンを実施しているのですが、そこから本会員(通常価格)になっていただけた方の率を把握するようにしています。
さらに会員になったあとの継続率・解約率も見ることができます。
そのデータによって、店舗において改善すべきポイントを考えることができるようになります。
「月2回しか来店していなかった人が2ヶ月で解約した」場合と「月に15回も来店していた人が1ヶ月で解約した」場合では、改善するポイントは全然違いますよね。
④「CPA」「LTV」から「人件費」「広告宣伝費」を算出
会員数や原価率をもとに計算すると、CPA(1人あたりいくらで会員になっていただいているか)やLTV(顧客生涯価値:顧客1人あたりが生涯でお店にいくら使ってくれるか)がわかります。
その数値をもとに人件費や広告宣伝費にいくら使えるかを計算できるようになります。
⑤「来店日時」や「購入品」から「クロスセリング」を考える
会員管理アプリを使えば、どの会員さまがいつ来店したか、またサブスクの受け取り以外に何を買ったかがわかります。
そのデータから会員さまのニーズを汲み取り、クロスセリング(ついで買い)の開発に活かすことができます。
『CRAFT TEA』でも会員さまと会員さま以外で人気な商品が異なる場合があるので、売上確保のためにはこちらも重要なデータになります。
データをフル活用した運営で飲食DX店舗に
新谷:
今でもかなり数字やデータを活かした店舗運営をしているのですが、今後も様々な打ち手を用意しています。
会員さまとの接点やデータを活かして、より良い方法で当初予定していたECサイトの立ち上げも進めていきたいと考えています。
緊急事態宣言の影響によって外食機会が減っている中でも関係なくしっかりと集客できているので、むしろこれからの伸びに私も期待しています。
高梨:
『CRAFT TEA』さまではデータを取得することはもちろんですが、そのデータを新店舗のオープン地決定や、新しい業態(ECサイトなど)の開発に活かしたりしているんですよね。
まさにそれが飲食DXとしての1つの正解と言えるのではないでしょうか。
以上、先日行われたセミナーのレポートでした!
favyでは飲食DXを支援するサービスを提供しています
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
飲食DXのためのプラットフォームを提供する株式会社favyでは、サブスクを活用した飲食DXのコンサルティングサービスやサブスク機能の提供・運用サポートを行っております。
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